年末恒例「生ずわい蟹」の世話をしてもらっている日本水産の後輩から先日嬉しい話を聞きました。小生がキャプテンとして座乗していた「竹生丸」がアルゼンチンに買い取られ南氷洋のオキアミ操業に従事しているとのこと。臼杵鉄鋼佐伯造船所で建造されかれこれ40年近くになると言うのに未だ現役で活躍している事を聞き、嬉しくなって今回は「オキアミ」について話をすることにしました。
学名をユーファウシアスペルバと言う南極オキアミは南極大陸周辺に広く分布するプランクトンの一種です。「カッパえびせん」等のスナック菓子、養殖の餌、医薬品の原料等々幅広く利用されている事は皆さん良く知っていることと思います。南氷洋捕鯨の規制が厳しくなる中無尽蔵とされていた南極オキアミを大手水産会社が一事業として取り組み始めたのは小生が水産学生として練習船に乗船していた頃です。地球上の大陸棚のあるところ日本のトロール船有りと言われるほど世界中に展開していた日本のトロール船隊も、年々厳しくなる規制に締め付けられ、行き場をなくし我が宝幸水産も北方トロールの主力船「竹生丸」を南氷洋に投入したのは小生が一等航海士の時でした。南氷洋のオキアミ群は無尽蔵とまではいかなくても、海面が何十マイルにもわたって色が変色するほど広範囲に生息しているため、この群(パッチと呼ぶ)が曳網によってばらけないよう群の端の方から丁寧に20トン程度ずつ捕獲していきます。大きい群になると3~4日かかっても取り尽くせない程です。始末が悪いのは魚躰が非常に柔らかく20トン以上捕獲すると魚躰が潰れてしまい製品に出来なくなるのです。それと鮮度低下が早くパン立て作業(10キロパンに詰めて急速冷凍する)は2時間が限度で、それ以上時間が経過すると魚躰が黄色く変色し製品価値がなくなります。釣り好きの皆さんが釣り餌に使うオキアミもこうした苦労の末作られたものなのです。我が家のアロワナ君にもこのオキアミを与えていますが餌をやるときは「心して食えよ」と言いながら与えています。オキアミの目玉が癌の治療薬に有効という噂が流れ本社の指示により目玉だけをピンセットでかき集めサンプル製品を作ったりもしましたがアレどうなったのでしょうねえ?我が社の新規事業「光触媒」と「オキアミ」何か結びつける事は出来ないかなあ~~と考える今日この頃です。
2004/11/04
2004/11/02
航海計器
「海は広いな~大きいな~♪♪」なんて歌ってられないほど「海」は広くて大きいのです。何せ地球の70%は海なのですからね。そんな大海原の真っ直中で自分の船の位置をどうやって知るのか?今回は航海計器についての話です。大航海時代の船乗りや探検家が未知の大陸を求めて初めての大洋を航海し未踏の地に辿り着くのは「運」あるのみなのですが、幸運にも大陸を発見しても出発した自国の港に戻る事が出来なくては偉業は世間に認められません。コロンブスもマゼランもちゃんと自国に戻ってこれたからこそ歴史に名を残せたのです。すなわち我が日本国の戦国時代、「我こそわ~~」と戦に明け暮れていた頃、西洋では陸地の見えないところでも自分の位置を知る術をもっていたのです。いくつかの天体の高度を計測し「位置の線」を海図上に引くことによって自船の位置を求める「天測」の技術を習得していたのです。紀元前にあのピラミッドを造った文明ですから当たり前と言えば当たり前ですが。小生が学生時代乗船した練習船では毎夕、毎朝「天測」実習が日課となっていました。何故夕方と朝方かというと星の高度を計測するには水平線が肉眼で見える時刻でないと高度を計測できないからです。アルデバラン・センタウリー・リゲル等々一等星の星を必死に探し、3~4個の星の計測が終わるとブリッジに戻り計算より割り出された方位線をチャートに引くと3~4本の線が交わるトライアングルが出来その中心が「推測船位」となるわけです。第二次大戦中、日本帝国海軍がこの「天測」で位置を出していたのに対し連合国の艦船は「デッカ」「ロラン」と言った陸上基地からの電波の到達時間差による位置測定方法を既に運用していました。負けるはずです、、、ね!。
小生が三等航海士のころは「ロラン」航法が主力でしたが吹雪になると電波が乱れたり、陸上のロラン局でカバー出来ない海域では全く使い物にならず、精度も誤差界50メートルと言われるほどでした。人工衛星による航法システム(インマルサット)が民間船舶で運用されるようになったのは小生の一等航海士時代でした。南氷洋のような海域では衛星の軌道から離れているため数時間に一度しか電波を受信できませんがベーリング海等船舶の多い海域では常に衛星からの電波をキャッチできるため精度は誤差界5メートルと言われていました。アポロ13号が月面着陸を断念して奇跡的に地球に帰還した時、大気圏への突入角度が少しでも狂うと燃え尽きてしまう危機にさらされた事に比べれば海の上の50メートル差なんて無いに等しいのです。海図上の50メートルなんて鉛筆の芯程しかないのですから。っま、おおざっぱな人間になるわけです。我が社にも「おおざっぱ」がたくさんいるけど彼らも昔は船乗りだったのかな???
小生が三等航海士のころは「ロラン」航法が主力でしたが吹雪になると電波が乱れたり、陸上のロラン局でカバー出来ない海域では全く使い物にならず、精度も誤差界50メートルと言われるほどでした。人工衛星による航法システム(インマルサット)が民間船舶で運用されるようになったのは小生の一等航海士時代でした。南氷洋のような海域では衛星の軌道から離れているため数時間に一度しか電波を受信できませんがベーリング海等船舶の多い海域では常に衛星からの電波をキャッチできるため精度は誤差界5メートルと言われていました。アポロ13号が月面着陸を断念して奇跡的に地球に帰還した時、大気圏への突入角度が少しでも狂うと燃え尽きてしまう危機にさらされた事に比べれば海の上の50メートル差なんて無いに等しいのです。海図上の50メートルなんて鉛筆の芯程しかないのですから。っま、おおざっぱな人間になるわけです。我が社にも「おおざっぱ」がたくさんいるけど彼らも昔は船乗りだったのかな???
written by
captain-ikebe
2004/10/04
低気圧と台風
台風16号が県下を直撃し猛威を振るいましたが皆さん被害はありませんでしたか?
台風についてはvol.2で 説明済みですが「低気圧」の定義はご存じでしょうか?台風に比べて至極簡単「周囲より気圧の低い所」を低気圧、高いところを「高気圧」と言うだけなのです。南太平洋上の海水温が年間を通じ26度C以上の海上で、熱のため水蒸気が飽和状態になり、そこに太平洋高気圧の比較的冷たい空気が北東より流れ込むため上昇気流が発生します。地球の自転により渦巻きは北半球では半時計方向となり時間と共に勢力が大きくなっていきます。これが熱帯低気圧の誕生ですが何故台風は日本に向かってくるのでしょう?台風の予想進路がズバリ的中するにはそれなりの法則があります。低緯度で発生した熱帯低気圧は原則的には貿易風(北東から南東に向けて一年中吹く風)の影響を受けて西進するのが普通です。又太平洋高気圧の周辺に沿って進む習性や気圧の谷・前線のある方向へと進んでいく習性の為、西進して中国大陸に上陸するもの以外は上記条件を満たす環境海域へと北西進してきます。中緯度以北は偏西風(西から東へ一年中吹く風)が吹いているためと、日本列島付近が太平洋高気圧の周縁部に当たることから、九州南岸あたりから急に進路が東寄りに変わります。台風が急に進路を変えるこの点を「転向点」と言います。太平洋高気圧の張り出し具合並びに大陸の低気圧や高気圧の気圧配置によりこの転向点がある程度予想出来るためテレビの天気図であれほど正確な進路やスピードが示されるわけです。低気圧や台風の影響を推測するときその地域が台風の進行方向に対して右半円(東側)に当たるか左半円(西側)に当たるかで影響力は全く違います。右半円は台風の進む方向へのベクトルと風が半時計方向に回り込むベクトルが一致するため左半円に比べ風雨共に強いのが特徴です。今回の宮崎・大分の被害が大きかったのはこのせいです。
さて、サバイバル知識?をもう一つ!手元に何もない状態で海や山で嵐にあったとき低気圧の中心を概ね知る方法があります。風を真後ろ(背中)に受けるように立ち両手を水平に伸ばします。このとき低気圧の中心は左手前方30度の方向に位置することが分かります。又風向の変化で低気圧の中心が自分の位置の東西どちらを進んでいるかも判断できます。風向が東→北→西と半時計方向に変化するときは東半円に、風向が東→南→西と時計回りに変化するときは西半円に自分が居ることが居ることが分かります。昔甲種船長の国家試験の筆記試験に合格し、口述試験を受けた際、この低気圧の風の変化に対する「船舶の避航方法」について聞かれたことがあります。試験管曰わく「風向の変化を如何に判断し、如何なる避航動作をとるべきか」と。受験生のキャプテン(このときは未だ甲種一等航海士免許)応えて曰わく「事業船に避航等有りません、時化が過ぎるのを戦場(漁場)でひたすら待つのみ、過ぎ去ったら即操業できる体制を整えておきます」と。結果は見事不合格でした!
台風についてはvol.2で 説明済みですが「低気圧」の定義はご存じでしょうか?台風に比べて至極簡単「周囲より気圧の低い所」を低気圧、高いところを「高気圧」と言うだけなのです。南太平洋上の海水温が年間を通じ26度C以上の海上で、熱のため水蒸気が飽和状態になり、そこに太平洋高気圧の比較的冷たい空気が北東より流れ込むため上昇気流が発生します。地球の自転により渦巻きは北半球では半時計方向となり時間と共に勢力が大きくなっていきます。これが熱帯低気圧の誕生ですが何故台風は日本に向かってくるのでしょう?台風の予想進路がズバリ的中するにはそれなりの法則があります。低緯度で発生した熱帯低気圧は原則的には貿易風(北東から南東に向けて一年中吹く風)の影響を受けて西進するのが普通です。又太平洋高気圧の周辺に沿って進む習性や気圧の谷・前線のある方向へと進んでいく習性の為、西進して中国大陸に上陸するもの以外は上記条件を満たす環境海域へと北西進してきます。中緯度以北は偏西風(西から東へ一年中吹く風)が吹いているためと、日本列島付近が太平洋高気圧の周縁部に当たることから、九州南岸あたりから急に進路が東寄りに変わります。台風が急に進路を変えるこの点を「転向点」と言います。太平洋高気圧の張り出し具合並びに大陸の低気圧や高気圧の気圧配置によりこの転向点がある程度予想出来るためテレビの天気図であれほど正確な進路やスピードが示されるわけです。低気圧や台風の影響を推測するときその地域が台風の進行方向に対して右半円(東側)に当たるか左半円(西側)に当たるかで影響力は全く違います。右半円は台風の進む方向へのベクトルと風が半時計方向に回り込むベクトルが一致するため左半円に比べ風雨共に強いのが特徴です。今回の宮崎・大分の被害が大きかったのはこのせいです。
さて、サバイバル知識?をもう一つ!手元に何もない状態で海や山で嵐にあったとき低気圧の中心を概ね知る方法があります。風を真後ろ(背中)に受けるように立ち両手を水平に伸ばします。このとき低気圧の中心は左手前方30度の方向に位置することが分かります。又風向の変化で低気圧の中心が自分の位置の東西どちらを進んでいるかも判断できます。風向が東→北→西と半時計方向に変化するときは東半円に、風向が東→南→西と時計回りに変化するときは西半円に自分が居ることが居ることが分かります。昔甲種船長の国家試験の筆記試験に合格し、口述試験を受けた際、この低気圧の風の変化に対する「船舶の避航方法」について聞かれたことがあります。試験管曰わく「風向の変化を如何に判断し、如何なる避航動作をとるべきか」と。受験生のキャプテン(このときは未だ甲種一等航海士免許)応えて曰わく「事業船に避航等有りません、時化が過ぎるのを戦場(漁場)でひたすら待つのみ、過ぎ去ったら即操業できる体制を整えておきます」と。結果は見事不合格でした!
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captain-ikebe