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2004/06/16

領海

私の船乗り時代、「領海」はその国々によって距離が違っていましたが近年全ての国が「12海里」に統一されました。1海里(1マイル)は1,852メートルですので約22キロがその国の領海と言うことになります。領海の基になるのが「基線」と言って領土(陸地)と海岸線(最低低潮面)の接するところを指します。この「基線」から200海里までを「経済水域」と言って大陸棚や石油資源の保護を目的として作られた水産界にはとてもやっかいな水域があります。私が船を降りる原因になったのもこの「経済水域」のお陰?です。
 大陸棚を有する国々が自国の水産資源や石油資源を守るため国連海洋法会議で半ば強引に法制化されたもので所謂「200海里法」と言われるものです。海洋国日本にとってこれは致命的な国際法となり(法外な入漁料や製品に対する関税を課せられ採算割れを起こす)これを機に大手水産会社は遠洋漁業から撤退を余儀なくされた訳です。この経済水域より外側の海を「公海」と言い航行、上空飛行などが自由に行える水域となっています。経済水域は資源利用やその他経済活動の面では「領海」と同じですが単なる航海や飛行に当たっては「公海」と同じ性格を持ちます。領空(領土と領海で囲まれた区域)や領海に対する認識はその国々で違いますが先進国の中では我が日本は桁外れに他の国々より意識が低いと思います。領空侵犯、領海侵犯した航空機や船舶が撃墜されたり拿捕されたり砲撃されたというような話は「世界の常識」なのですが平和な?日本では北朝鮮やロシアの航空機、船舶が侵犯しても「出て行け~」と追い出すだけ、、、島国根性の日本人のはずなのに何処かが狂っているとしか思えません。もっとも私が三等航海士時代、アフリカ西岸では常識的?に領海侵犯を繰り返し他社を大きく引き離す漁獲量を上げていたことを思えばあまり偉そうなことは言えませんが。機関銃で撃たれても性懲りもなく領海侵犯をして生産を上げようとした心意気こそ「大和魂」だ~~と勘違いしていた船長さんも居たけど、今思えば暢気な時代だったんです、あの頃は!
 詳しい話は「キャプテン池辺の回顧録」の三等航海士編を読んでみてください。「領海」とはどんなものか少し実感できると思います。何事も中に踏み込まなければ分からないというのが人間の心理、社内旅行の国外組に数人領海侵犯を実行した強者がいましたが、彼らに聞けば「領海侵犯」をしたくなる心理が理解できるかもしれませんよ。