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2005/07/05

指揮系統

先日の日曜洋画劇場で「K―19」というロシアの潜水艦を舞台にした映画が放映されていました。ハリソンフォード演ずるロシアの最優秀原子力潜水艦の艦長が原子炉の事故で艦や部下の命、さらには国や世界を原爆の脅威から如何にして守ったかという内容のもので、嘗て小生が船長として乗船していた津田丸の火災事故を思い出しました。生命の危険と背中合わせの仕事、さらには利潤を追求する事業船というのは「指揮命令系統」がきちんと確立・実践されるようになっていなくては旨くいきません。一端事が起これば「じっくり考えて、、、」なんて悠長なことは言っておれません。船長の一瞬の判断ミス、決断の遅れが致命傷となるからです。すなわち企業に大損害を与えるだけでなく乗組員の命やその家族を路頭に迷わせることにも成りかねないからです。そのための備えの基礎となるのは「日常のシミュレーションの反復」です。大時化の時エンジントラブルで船が横波を受けたとき、舵が故障したとき、機関室・船倉・居住区などでの火災発生時の対応、人身事故、操業に関する戦略やトラブル等々「こうなったら、こうする」というようなことを暇さえあれば考えて緊急事態に備えなくてはいけません。事故は往々にして「予想もしない」原因で発生するものです。日頃のシミュレーションの範囲内での事故でさえ的確な指示を即座に出すことは難しいものです。ましてや予想外の事故に直面したときの指揮官の判断と決断の重要性は計り知れないものがあります。機関部・甲板部・司厨部・事務部・製造部にはそれぞれ機関長・一等航海士・司厨長・通信長・工場長といった各部のリーダー(サロン級士官)が居ます。その下に士官・下士官・部員といったスタッフが居てピラミッド型の組織が構築されています。100人近い乗り組み員を統率して行くうえで一番大切なことは「全員に共通する目的をはっきり認識させること」です。「一人の落伍者もなく全員が元気に帰国すること、他船よりも好成績を上げ収入を多く得ること」そのためには一人一人が何を成すべきかを「言葉で、態度で、職権で」全員に認識させることです。指揮官の方針はピラミッドを順次下っていくように直属の部下に伝達していく仕組みを構築すれば仕事は旨くいきます。封鎖的な船内生活をスムーズに遂行するため「指揮命令系統」を始め船の世界ではいろいろと工夫された慣習が多々あります。そしてこれらは全て陸の世界でも通用することをキャプテンは河童になって初めて知りました。人は皆平等、職位で人間の価値が決まるものではありません。与えられた部署で如何に力を発揮するか、発揮できるかがその人の「人間としての評価」「仕事人としての価値」なのです。我が社の社員が得意先や業者の方々から褒められたときの喜びは何物にも代え難く「同じ釜の飯を食う」仲間の評価点を出したり給与決める重たい作業から一瞬なりとも解放されます。
皆さん!良い仕事をして素晴らしい絆を築いていきましょう!!