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2012/01/17

イタリア船の座礁

船を下りて20年になる。船舶の航海計器、システムも随分進歩しただろうなあと思っていたらとんでもない事故が起きた。海難事故でも座礁事故と言うのは稀にしか起こらないというのが通念である。湾内に投錨(アンカーを降ろし停泊してる状態)中の船が強風のためアンカーを引きづりながら浅瀬に乗り上げるか、航行中エンジントラブルで船が漂流し座礁するか位である。
小生が船乗りを引退する最後の航海は係船中の津田丸を三重県の造船所から山口県のドックに廻航するものであったが途中別府湾に寄り道をした。詳細な海図もあり、航海計器もレーダー、魚群探知機、ソナーを備え未知の海域といえども全く心配の余地がないのであるが、それでも用心して安全な場所までしか近寄らなかった。これが船乗りの常識である。嘗て南氷洋に二度行った事があるがテーブル型の氷山の間を縫ってオキアミの群れを探すときは神経を使った。きちんとした海図もなく、位置は一日に一回程度人工衛星からの電波を受信して大まかな位置を知るだけである。魚群探知機は船の直下の水深しか分からず、前方を照らすソナーは精々500メートル程度である。船の大きさにもよるが舵を切って船首が回頭を始めるまで相当な距離を直進するのが普通で、全速前進の船が全速後進(車で言う急ブレーキ)をかけて船が完全に停止するまで2キロ近くかかるので大型船の操船はそれほどのんびり?厄介なものなのである。島に接近するときはレーダーで位置確認をしながら探知機で水深をチェックしながら最大限の注意を払いながら航行しなければならず、今回の事故が如何に乗組員の不注意から起きたものであるか疑う余地はない。
それにもましてお粗末だったのは船長の行動である。小生の船乗り時代、駄目なリーダーは「何もセンチョウ」「何もキカンチョウ」と揶揄されていたが今回の船長はそれ以下の人罪!であったのだろう。船乗りの風上にもおけないこのような人間が居る「イタリア」と言う「国」そのものが危ないのも分かるような気がするのであるが。。。