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2005/01/06

砕氷船

氷が張りつめた水面に航路を開くように設計された船を砕氷船と言います。もともと五大湖やバルト海のような冬季、氷で埋まる地域の水路確保のために使用されていたものが北極や南極大陸の探検で活躍するようになり広く認識されるようになったものです。
日本では1965年に海上保安庁所属の「ふじ」が、1982年には防衛庁所属の「しらせ」が建造され南極観測に貢献してきました。東神奈川のNKK浅野ドックに定期検査のためドック入りしたとき「しらせ」と隣り合わせになり見学をさせてもらいました。
私の乗船していた工船トロール(すり身母船)もふつうの船舶に比べ船首は耐氷構造のため頑丈にできていましたが砕氷船のそれは比較にならないほど頑丈でした。ふつう外板は12ミリ前後の鉄板で出来ていますが「しらせ」の船首部は厚さが1メートルもあり正に鉄の塊でした。私のホームグランドのベーリング海の流氷の暑さは、はせいぜい20~30センチでしたが、それでも全速でぶつかると船首部に凹みが出来る程衝撃は大きいものでした。砕氷船は1~2メートルの氷原を平気?で進んでいくのですから並大抵の構造では耐えられません。氷の破片がスクリュウや舵に巻き込まないような工夫も至る所にされています。薄い氷は船の推進力だけでバリバリと割って進みますが、厚い氷原に出くわすと、激突と乗り上げを繰り返しながら進む「スラミング砕氷」という方法でノロノロと進みます。船首と船尾にバラストタンクがあり水の注排水・移動を行うことで船首を持ち上げたり降ろしたりギッコンバッタンしながら一日何メートルかの前進をするのです。船乗りは気の長い人しか務まらないのがおわかり頂けるでしょう? 船のブリッジから四方を見渡し365度すべてが氷に包まれている流氷をパックアイスと呼びます。砕氷船はこれを自分の船体重量で上から押し割って進みますが、潜水艦がこういう海面に浮上するときは砕氷船とは逆に下から上に全速で突き上げて氷原に浮かび上がります。ハワイ沖で訓練中のアメリカの潜水艦が日本の水産高校の練習船に体当たりしたのはこの種の訓練中でした。余談ですが先般、中国の潜水艦が領海侵犯したさいTVのコメンテーターが潜水艦では正確な位置がでないから間違って、、、、等と馬鹿なコメントをしていましたが自船の位置も海上の様子も空さえも正確な情報は得られのです。練習船「宇和島丸」には私の後輩が指導教官として乗船していましたがさぞ無念だったことと思います。