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2012/06/07

天体ショー

金冠日食に続いて、金星の太陽面通過と盛り上がった天体ショーも一段落した。子供のころガラス片に蝋燭の煤を付け太陽を見上げていた時代に比べるとハイカラになったものである。光学機器メーカーのスマートなグラス越しに天空を仰ぎみる子供たちの姿は微笑ましかった。金星は内惑星(太陽と地球の間にある惑星)であるがゆえに満ち欠けをすることを観察した何割の人が知っているのだろうかとふと思った。せっかくのチャンスなのだからテレビ局は専門家を招いて宇宙のイロハ的な番組にしても良いのでは?どの局も空を見上げる群衆の画像ばかりを映し出していたが、昨今のメディアのお粗末さはこんなところにも表れている。
金星は大きさ、質量ともに地球によく似ている。太陽に近いため、大気の95%は二酸化炭素で覆われているため温室効果で表面温度が500度近くある灼熱の惑星である。公転軌道は太陽を中心にほぼ真円にちかく224日で一周している。自転速度は非常に遅く243日で一回転しているので公転周期より遅いことになる。特筆すべきは太陽系の全ての惑星の自転方向(地軸を上から見た時に反時計周りに回転している)が公転軌道と同じであるのに対し金星だけは時計回りに自転している点である。したがって金星では西から夜明けが始まることになる。金星が明け方と夕方しか見えないのは「最大離隔」と言う現象を理解しなければならない。金星が太陽から東方へ離れ日没後の西の空に見える時が東方最大離隔、太陽が西方へ離れ日の出前に見える西方最大離隔、この両時刻帯しか金星を見ることはできない。明けの明星、宵の明星たるゆえんである。金星の満月?(満金?)は太陽の反対側、すなわち地球から遠い位置にあるため明るさは左程ではないが、半月(半金?)の頃がもっとも明るくマイナス4等星程の明るさとなる。ある程度の知識を持って夜空を眺めると、特に惑星は天体望遠鏡で観察すると非常に興味深く、ついついその世界にのめり込んでいく。土星のリング、木星の縞模様など初めて見たときの感動は未だに宇宙への興味を抱かせ続けてくれる。
これまで二人の友人に愛用の天体望遠鏡を差し上げたが彼らから宇宙の話題が出てこないのは少々寂しい気がしないでもない。