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2005/08/02

進水式

いよいよ夏も間近、今月18日は「海の日」と言うことで今回は船の進水式についてのお話です。
船を建造するにはその船を載せる台、すなわち船台(進水台)が必要です。一般的に船台は水面より高い地上に置かれ海に向かってある程度の傾斜(斜めに下がっている)を持って作られています。進水台は二組の重く堅い木材で作られています。新船建造の第一歩はこの上にキール(船底の中心になる人間で言う背骨に当たる物)を載せることから始まります。二組の進水台の一つは「固定進水台」と言い建造作業をする場所から海の中まで真っ直ぐ伸びている動かない台です。もう一つは「移動進水台」と言って固定進水台の上に置かれている物で船底が直接接している台です。船が進水するときは船と一緒に固定進水台の上を滑っていく物です。ある程度艤装が進むといよいよ「進水式」です。先ずキールブロックが外され、固定と移動の両進水台に潤滑油が塗られます。最後に進水台を止めていたスパイクなどの留め金を外すと船は自重で滑りながら海に入っていきます。船上ではこういう作業を知ってか知らずか(多分何も分からずに?)船のオーナーやそのお嬢さん方が軍艦マーチ(何故かバックグラウンドはこの曲が定番でした)を合図に、金ぴかの斧でロープを切るという儀式が行われます。別にロープが切れたから船が滑り出す訳ではなく、この儀式を監視している係りの人が下で作業をしている人に指示を出し、斧でロープが切られた瞬間に最後の留め金を外す仕組みになってるのです。艤装中の船が海に浮かぶとき普通ならば水平に浮かぶ筈ですが艤装というのは船が船台を降り海に浮かんでからも色んな装備をするため、あらかじめバランス計算をし船が水平を保つようウエイト調整をします。これをミスると勢いよく進水した船が傾くという失態を演じるわけで小生が佐伯造船所で艤装中、これを目撃しました。凄かったのはこれを見た当事者(佐伯造船所のスタッフ)がケロリとして「珍しいことではない」と言った顔つきをしていたことです。当時の佐伯造船所のレベルがどれ程のものであったか?後に倒産の憂き目に合うのももっともな話ではありました。これとは逆に長崎の三菱造船所で建造された軍艦武蔵が進水した際、鶴の港と言われる長崎港のこと、水面が足りず勢い余って対岸の出島岸壁に船尾が接触をしたそうです。その時損傷したのは武蔵の船尾ではなく出島の岸壁だったそうで、一躍日本の造船技術・三菱造船所の名が世界に認められた事件でもありました。その三菱造船所でもイギリスの豪華客船が完工を目前に船火事を起こしました。JR事故同様「採算重視」の弊害と言うか、大切な「精神」が失われつつある時代を象徴しているように思えます。会社の「理念」「指針」のしっかりしていない企業に将来は無いと言われるのは当にこのことです。我々もしっかりと大地に脚を付けて地道な努力をしていきたいものですね。