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2018/09/10

船舶の走錨事故 ⚓

台風21号が列島を縦断し甚大な被害をもたらしたことは連日のニュースで知ることが出来た。その中で関空の連絡橋に停泊中のタンカーが衝突し、その後の被害を大いに拡散させたことが気になるところである。おそらく海上保安庁と海難審判庁が調査をしてる頃であるが、船長の責任はかなり重いと考えられる。そもそも「走錨」とは、アンカーを投錨(錨を一気に海底に降ろす=放り出す)しアンカーの爪を海底にしっかり咬ませ、その抵抗とアンカーチェーンの鎖の重さで船を支えていたものが、風や波浪の力に負けて船が押し流されることを言う。一旦流され始める(船体が波浪を横から受ける状態で)と二度とアンカーの爪は海底に噛ますことが出来ないのが普通である。このような場合、直ちにエンジンをかけ船首を波浪に向け「揚錨(錨を上げる)」しエンジンの推力を調整しながら位置を保つようにするのが適切な手段である。もっと言えば、これほどの台風が接近するときは、大型船ほど湾内に留まることをせず沖に移動しエンジンのみで時化が静まるのを待つのが常識である。今回の事故?の船舶の所有者、当該船舶の船長には重大な過失があったと認定されるであろう。これも偏に日頃の危機管理能力、意識の低さが引き起こした人災でる。この様なニュースを見ていると、ついつい昔の船乗り時代を思い出す。ベーリング海で風速70メートルの時化の中を一昼夜近く「つかせ=エンジンを全開にし船首を波浪にたたせひたすら時化が収まるのを待つこと」せたこと、西太平洋でハリケーンに遭遇し、幾らエンジンを全開しても波浪の力に負けて船首を風上に向けることが出来ず、横波を受けながら只々成すすべもなく流されたこと等など大自然の力を身をもって体験したことは、現在の「危機管理意識」に少しは役立っているのかもしれない。