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2004/11/02

航海計器

「海は広いな~大きいな~♪♪」なんて歌ってられないほど「海」は広くて大きいのです。何せ地球の70%は海なのですからね。そんな大海原の真っ直中で自分の船の位置をどうやって知るのか?今回は航海計器についての話です。大航海時代の船乗りや探検家が未知の大陸を求めて初めての大洋を航海し未踏の地に辿り着くのは「運」あるのみなのですが、幸運にも大陸を発見しても出発した自国の港に戻る事が出来なくては偉業は世間に認められません。コロンブスもマゼランもちゃんと自国に戻ってこれたからこそ歴史に名を残せたのです。すなわち我が日本国の戦国時代、「我こそわ~~」と戦に明け暮れていた頃、西洋では陸地の見えないところでも自分の位置を知る術をもっていたのです。いくつかの天体の高度を計測し「位置の線」を海図上に引くことによって自船の位置を求める「天測」の技術を習得していたのです。紀元前にあのピラミッドを造った文明ですから当たり前と言えば当たり前ですが。小生が学生時代乗船した練習船では毎夕、毎朝「天測」実習が日課となっていました。何故夕方と朝方かというと星の高度を計測するには水平線が肉眼で見える時刻でないと高度を計測できないからです。アルデバラン・センタウリー・リゲル等々一等星の星を必死に探し、3~4個の星の計測が終わるとブリッジに戻り計算より割り出された方位線をチャートに引くと3~4本の線が交わるトライアングルが出来その中心が「推測船位」となるわけです。第二次大戦中、日本帝国海軍がこの「天測」で位置を出していたのに対し連合国の艦船は「デッカ」「ロラン」と言った陸上基地からの電波の到達時間差による位置測定方法を既に運用していました。負けるはずです、、、ね!。
 小生が三等航海士のころは「ロラン」航法が主力でしたが吹雪になると電波が乱れたり、陸上のロラン局でカバー出来ない海域では全く使い物にならず、精度も誤差界50メートルと言われるほどでした。人工衛星による航法システム(インマルサット)が民間船舶で運用されるようになったのは小生の一等航海士時代でした。南氷洋のような海域では衛星の軌道から離れているため数時間に一度しか電波を受信できませんがベーリング海等船舶の多い海域では常に衛星からの電波をキャッチできるため精度は誤差界5メートルと言われていました。アポロ13号が月面着陸を断念して奇跡的に地球に帰還した時、大気圏への突入角度が少しでも狂うと燃え尽きてしまう危機にさらされた事に比べれば海の上の50メートル差なんて無いに等しいのです。海図上の50メートルなんて鉛筆の芯程しかないのですから。っま、おおざっぱな人間になるわけです。我が社にも「おおざっぱ」がたくさんいるけど彼らも昔は船乗りだったのかな???